「わたくしは、自分自身に正直に生きているだけですわ」

「はいそこ！でけぇとかいう陰口はもっと聞こえないところでお願いしますわこんちくしょー」

「背中に気を付けろ。ためらわず打て。弾を切らすな。……いいこと？ドラゴンには絶対、関わるな」

黒髪の女性。遠目に見ると物腰の上品な美人さんだが、近づいて見ると様子がおかしい。

一言で言うと「くそでけぇ」のだが、怖い目に逢いたくなければ余り口に出さないほうが良い。

その種族はオーク。女性にしては異様とも言える体躯はなるほどヒューマンならざる種族のそれだが、

この女は、体格以外の凶暴性を強かに隠している。

ヒューマンに近い立ち振る舞いを好み、礼儀と交渉を重んじる……ランナーとしては、一端のフェイスである。

その体躯は異様ではあるのだが、美人は美人だ。彼女と言う存在は人を集める。

だがそれはそれとして、隠されてはいるものの、凶暴性も確かに存在する。

サイバーウェアこそ積んでいないが、彼女は明らかな曲者……アデプトだ。

何故か「銃器との相性が壊滅的」という特性こそあるが、ダーツと打撃戦だけで、十分に立ち回る。

ただでかいだけではない、何が飛び出すか判らない出来の悪いびっくり箱のような女である。

サメのように笑った時にのみ、種族特融の牙がちらりと見えるという。

ジャネッタという女の生まれ育ちについては、よく判っていない。

ただ、普通のオークの社会で育ったわけではないのは間違いない。

あるいは、シアトルに出向く以前は、どこかしらのヒューマンの暮らす環境で育ってきたのだろうか……

なんにせよ、シアトルに来た時には、既に彼女は、自分のスタイルを確立していた。

……そりゃあ、ストリートでどうやったらこんな育ち方をするのやら、と言う話である。